Evanescence エヴァネッセンス 『The Open Door』(2006年)
『The Open Door』(2006年)
アメリカのゴシックメタル・バンド、Evanescence(エヴァネッセンス)の、前作『Fallen』より約3年半振りとなる2ndアルバム。
<メンバー> ※2ndアルバム時のメンバー
Amy Lee(エイミー・リー)(vo,piano)
Terry Balsamo(テリー・バルサモ)(g)
John LeCompt(ジョン・ルコンプ)(g)
Rocky Gray(ロッキー・グレイ)(ds)
(ジョンとロッキーは2007年5月に脱退、テリーは2015年8月に脱退している。今現在エイミー以外総入れ替え(^^;))
Evanescence(エヴァネッセンス)は、(vo)のエイミー・リーと、(g)のベン・ムーディーが中学時代に出会ったことで結成されたバンド。
1981年12月13日にアメリカのフロリダで生まれ、音楽好きの両親に育てられたエイミー・リー。
9年間クラシックピアノを習い、学校では合唱隊に参加。
モーツァルトなどのクラシック音楽が大好きだったという。
13歳の頃にアーカンソーに引っ越し、父親がアーカンソー州リトル・ロックで有名なラジオDJとして活躍したこともあり、フォー・トップスといったソウル・ミュージックに加え、ニール・ヤングをはじめとするロックを耳にする機会が増え、次第にニルヴァーナやビョークにも夢中になっていった。
ギターを教えてくれたのも、若い頃にバンドをやっていた父親だった。
そしてエイミーは、学校のキャンプで知り合ったベンに誘われ、バンド活動をスタートする。
エイミーは、6歳の時に3歳年下の妹を亡くしていて、その事がエイミーの人生観を大きく変え、人格形成にも大きく影響を与えた。
「脳がショッキングな出来事に耐えられなくなると”現実逃避”に向かい、そのまま脳が限界を迎えると”記憶喪失”になるの」とエイミーは話したが、彼女はそこまでは進まず、死に対する興味から妄想に走ったり、「夢は無意識の心の窓だから」と、夢分析を行うようになっていった。
一方で、クリエイティヴになれるからと日記をずっと書き続けていた。
前回のアルバム『FALLEN』が”死”をテーマにしたものなら、今回の『The Open Door』は”生”について歌っているポジティヴな内容だとエイミー。
1stシングルである「Call Me When You're Sober」はエイミーの強い意志を主張している作品となった。
ギターのベン・ムーディーは、1stアルバム『Fallen』に伴うツアー中に双極性障害などによる疲労や、エイミーとの創作性の違いなどにより突然脱退。
ベンの後任にはテリー・バルサモ(元コールド)を迎えた。
『Fallen』では、ソングライティングはベンとエイミーが中心でしたが、ベンが脱退し、エヴァネッセンスの1stで聴かせたヘヴィでゴシックでダークネスな世界観は今回どのようになっているのか!?
本作では、ソングライティングはエイミーが中心になって書かれているようです。
世界的に大ヒットを記録した1st『Fallen』は、グラミー賞で「最優秀新人賞」「最優秀ハードロック・パフォーマンス賞」の2部門を受賞し、日本でも「ゴールド・ディスク大賞」を受賞した。
2004年8月まで行った『Fallen』のワールド・ツアーのあと、たっぷり(2か月)休養し、丸1年という時間をかけて本作『The Open Door』の曲作りをし、2006年1月から3月にかけて、ロサンゼルスのスタジオや古い教会を使ってレコーディングされた。
今作も前作同様にデイヴ・フォートマンをプロデューサーに迎え、プログラミングにはリンプ・ビスキットとの仕事で知られるDJ Lethalが参加。
基本的にほとんどの曲をエイミーが書き、後からテリーがギターのリフなどを加えていったので、ピアノ主体のナンバーが多くなっている。
※一部『The Open Door』のライナーノーツを参考に記載しています。
「Sweet Sacrifice」
オープニングトラック。3rdシングル。
恋愛関係に於いて自分が”犠牲”になったという事を歌いつつ、”今の自分はもう恐れはしない”というメッセージが込められている。
『Fallen』では”恐怖心”について多く語ったから、それを乗り越えた曲を1曲目に持ってきたのはとてもクールだと思っているとエイミー。
「Call Me When You're Sober」
1stシングル。
ピアノの音色から始まるメロディアスなロックナンバー。
ダメ男だった恋人と別れる時の歌で、今までのエイミーの書く抽象的でミステリアスな歌詞とは違い、ストレートに自身の意思表示をした1曲。
曲の最後にエイミーの笑い声が入っていて、これは”こんなにはっきり物を言ってしまうなんて信じられない!”という笑いとの事(*^^*)
「Weight Of The World」
ファンについて語っている歌。
「ファンは私に全てを求めているところがあって、私が彼らの悩みを解消できる、と思っている人もいるけれど、私だってみんなと同じただの人間」だから…。そういったプレッシャーを歌っている」とエイミー。
「Lithium」
2ndシングル。
これもエイミーの前の恋人との辛い関係から出来た曲との事。
別れて幸せになるべきか、このまま悲しみに耐えるか、といった葛藤から生まれた。
エイミーにとって、より深い場所にインスパイアされ音楽を作ることが出来るのは”悲しみ”があるから。
「Cloud Nine」
これも恋人と別れた時に出来た曲。
ヴォーカルの可能性を追求し、オペラ的なファルセットから低音域まで、様々な歌声を聴かせてくれる1曲。
「Snow White Queen」
エイミーが実際に体験したストーカーについて歌った歌で、”All want is you”のフレーズは、エイミーがストーカーの気持ちになって歌っているそう。
クラシックの影響が前面に出ている1曲。
モーツァルトのレクイエムニ短調「ラクリモサ」(鎮魂歌)をサンプリングした曲。
エイミーは「恋愛関係に於いて、誰でも相手に合わせる努力をすることはあると思うけど、それが度を超えて、自分がわからなくなってしまうって事があると思うの。そういったことを歌っている」
「Like You」
エイミーの亡くなった妹について書いた曲。
「自分が子供の時に彼女の死について子供なりに感じたことを書いてあるわ。
この事件は一生、自分の人生の一部になっていくと思う。だから時々そのことについて語ろうと思っている。いつでも彼女の居場所を作ってあげたいという気持ちもある。
それが前回のアルバムでは「Hello」だったけど、今回はこの曲なの。私は彼女にたくさんのインスピレーションを貰ったことに借りがあるから」とエイミー。
「Lose Control」
全てをコントロールしたいと思ってしまう性格のエイミーが、自分を追い詰めずに気楽にいきたいという思いから、逆にコントロールすることを忘れるという意味で書いた曲。
音楽的にもコントロールを失うくらいクレイジーなものをつくりたかったそう。
「The Only One」
人生について歌ったもの。
エイミーは「なぜこの世に生まれついたのか、その意味はどういう事なのか、という事を歌っている。特に私は”thinker”(考える人)だから、何についても深く考えちゃうのよ」
「Your Star」
ツアー中に浮かんだフレーズが曲作りのきかっけになっていて、歌詞の内容もツアーの事を歌っているそう。
「早く家に帰りたい、あの人のもとに戻りたい、心地良い場所にもどりたいという気持ちが歌われている」とエイミー。
「All Star I'm Living For」
夢について歌っている曲。
「夢はとてもクリエイティヴなエネルギーを持っているものだと思う。私の中に残っているエネルギーが夢として表れているんだと感じているわ」とエイミー。
「Good Enough」
4thシングル。
「このアルバムを作っている時に、プライベートで数々のトラブルや葛藤があって、頭にくることや悲しくなることがたくさんあって、そして最後には自分の足で立ってそこから出ることが出来た。そしてある人と出逢い、その人の腕の中に飛び込むことが出来たの。だからこの曲には特別な思い入れがあるわ。今の私はとっても幸せで、本当に素晴らしい関係なの」と、新たな恋に落ちたことについて語った、エイミーのポジティヴな面が表れている1曲。
「Call Me When You're Sober(acoustic version)」
ボーナス・トラック
※各曲の解説については一部『The Open Door』のライナーノーツを参考に記載しています。
1stアルバム『Fallen』の後、エイミーと共に曲を書いていたベン・ムーディ―が脱退してしまい、この2ndではエイミーがにほとんどの曲を書いたそうです。
エヴァネッセンスのゴシックでダークな世界観はそのまま。
が、メロディがはっきりしていて、1曲1曲に個性があった前作と比べてしまうと、メロディが若干弱く、印象に残る曲があまりなくインパクトに欠けてしまう感は否めません...。
(逆に言えば、それだけ前作の出来が良かったとも言えます)
しかしエイミーのヴォーカルはさらにエモーショナルで表現豊かになっているのではないかと思います。
”ダークファンタジー”的な世界観を堪能したい方は是非チェックしてみて下さい!(*^^*)