Alanis Morissette アラニス・モリセット 『Supposed Former Infatuation Junkie』(1998年)
『Supposed Former Infatuation Junkie』 (1998年)
カナダ出身のシンガーソングライター、Alanis Morissette(アラニス・モリセット)の、前作『Jagged Little Pill』より約3年振りとなる2ndアルバム。
※一部Wikiと国内盤ライナーノーツを参考に記載しています。
<プロフィール&バイオグラフィ>
Alanis Morissette(アラニス・モリセット)
出生名:Alanis Nadine Morissette
生年月日:1974年6月1日
出身地: カナダ オンタリオ州オタワ
幼年期は西ドイツで過ごし、6歳の頃からピアノを覚え9歳で曲を書き始めるようになる。
1984年、10歳の時にTV番組にレギュラー出演することになる。
そこで稼いだお金を資金源に自主制作でCDシングルを2000枚リリースし、それを聴いてアラニスに才能を感じたMCAカナダと1988年に契約を結ぶことになった。
高校生であった1991年4月に、カナダ限定でデビューアルバム『Alanis』をリリースし、このアルバムがカナダでプラチナム・ディスクを獲得する大ヒットを記録する。
また、このアルバムからのシングル「Too Hot」「Walk Away」「Feel Your Love」のいずれもヒットを記録するなど、カナダ国内で圧倒的な人気を獲得。
直後に開催されたカナダ最大の音楽の祭典「ジュノー賞」において「Most Promising Female Vocalist of the Year」「Single of the Year」「Best Dance Recording」の3部門にノミネートされ、「Most Promising Female Vocalist of the Year」を獲得。
1992年8月には、2作目のアルバム『Now Is the Time』をリリース。
こちらもカナダ限定リリースで、「An Emotion Away」「No Apologies」「(Change Is) Never a Waste of Time」などのヒット曲が収録されている。
アルバム自体のセールスは伸びず、結果的に彼女は所属していたメジャーレーベルのMCAカナダから離脱した。
1993年の高校卒業と同時にオタワからトロントへ、19歳の時に単身でアメリカのロサンゼルスへ移り住んでおり、そこで様々な経験を経て、20歳の時にマドンナの経営するメジャーレーベル「マーヴェリック・レコード」と契約を結ぶことに成功する。
1995年に世界デビューとなる1stアルバム(カナダ限定リリースの前2作を入れると3枚目となる)『ジャグド・リトル・ピル』をマーヴェリック・レコードからリリースする。
音楽性も以前の2枚のアルバムとは異なり、よりグランジやオルタナティブ・ロック寄りのサウンドとなっている。
それ以前は、一般的にダンスやダンスポップと称される曲を発表してきただけに、非常に大幅に方向性を変える事となった。
その後、このアルバムに収録されている、自分を捨てた元カレに向けての辛辣なメッセージを、激しいロックスタイルで歌った楽曲「ユー・オウタ・ノウ」が、アメリカのラジオ局でパワープレイとなり、立て続けに「オール・アイ・リアリー・ウォント」「ハンド・イン・マイ・ポケット」「アイロニック」とヒット曲を連発する。
特に 「アイロニック」は代表曲として人気が高く、1997年に開催されたグラミー賞にて「レコード・オブ・ザ・イヤー」にもノミネートされた。
これらのヒット曲の効果も相まって、アルバム『ジャグド・リトル・ピル』は全米で1600万枚、全世界で3300万枚を売り上げる記録的な大ヒットとなり、女性アーティストによる世界デビューアルバムの売り上げとしては異例な結果となった。
その後、開催されたジュノー賞1996においては「年間最優秀アルバム賞」「年間最優秀シングル賞(「ユー・オウタ・ノウ」が受賞)」「Female Vocalist of the Year」「Songwriter of the Year」「Best Rock Album」等の計6部門を、1996年グラミー賞においては「最優秀女性ロック・ヴォーカル・パフォーマンス賞」「最優秀ロック楽曲賞 (「ユー・オウタ・ノウ」が受賞)」「最優秀ロック・アルバム賞」の計3部門を、1998年のグラミー賞では「Jagged Little Pill Live」のミュージックビデオが「最優秀ミュージック・ビデオ賞」を受賞している。
1998年11月3日には、2ndアルバム『サポーズド・フォーマー・インファチュエイション・ジャンキー』をリリースし、全米ビルボードアルバムチャートにて初登場1位を記録する。
同アルバムは、ローリング・ストーン誌を始めとする各メディア界から高い評価を得るものの、セールス面では前作に及ばず、全米でのセールスは260万枚に留まった。
1999年グラミー賞において「最優秀ロック楽曲賞」「最優秀女性ロック・ヴォーカル・パフォーマンス賞」の計2部門を受賞。
2000年のグラミー賞においては、全米シングルチャートにて最高17位を記録した同アルバムからの1stシングル「Thank U」が「最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞」にノミネートされている。
その他にも、このアルバムからは「ジョイニング・ユー」、「アンセント」、「ソー・ピュア」等がシングル・カットされている。
1999年11月にはMTVアンプラグドでのライブを収録した初のライブアルバム『MTV アンプラグド』もリリースしており、全米で64万枚を売り上げている。
このライブアルバムには、既存曲のライヴ音源の他、ザ・ポリスのカバー曲「キング・オブ・ペイン」と、新曲「ノー・プレッシャー・オーヴァー・カプチーノ」の2曲が特別に収録されている。
また、「ウッドストック 1999」でもライヴを行っており、このとき披露した楽曲「ソー・ピュア」が、2001年グラミー賞にて「最優秀女性ロック・ヴォーカル・パフォーマンス賞」にノミネートされた。
2020年7月、最新作『Such Pretty Forks in the Road』を発表。
<discography>
『Alanis』(1991)※カナダ限定リリース
『Now Is the Time』(1992年)※カナダ限定リリース
『Jagged Little Pill / ジャグド・リトル・ピル』(1995)
『Supposed Former Infatuation Junkie / サポーズド・フォーマー・インファチュエイション・ジャンキー』(1998)
『Under Rug Swept / アンダー・ラグ・スウェプト』(2002)
『So-Called Chaos / ソー・コールド・カオス』(2004)
『Flavors of Entanglement / フレイヴァーズ・オブ・エンタングルメント』(2008)
『Havoc and Bright Lights / ハヴィック・アンド・ブライト・ライツ』(2012)
『Such Pretty Forks in the Road』(2020)
その他アルバム
『MTV アンプラグド』(1999)
『ジャグド・リトル・ピル~アコースティック』(2005)
『ザ・コレクション』(2005)
『Supposed Former Infatuation Junkie / サポーズド・フォーマー・インファチュエイション・ジャンキー』
発売日:1998年11月
01. Front Row / フロント・ロウ
02. BABA / BABA
03. Thank U / Thank U
04. Are You Still Mad / アー・ユー・スティル・マッド
05. Sympathetic Character / シンパセティック・キャラクター
06. That I Would Be Good / ザット・アイ・ウッド・ビー・グッド
07. The Couch / ザ・コーチ
08. Can't Not / キャント・ノット
09. UR / UR
10. I Was Hoping / アイ・ワズ・ホーピング
11. One / ワン
12. Would Not Come / ウッド・ノット・カム
13. Unsent / アンセント
14. So Pure /ソー・ピュア
15. Joining You / ジョイニング・ユー
16. Heart Of The House / ハート・オブ・ザ・ハウス
17. Your Congratulations / ユア・コングラチュレイションズ
国内盤ボーナス・トラック
18. Uninvited (DEMO) / アンインバイテッド(デモ・ヴァージョン)
プロデュース:Glen Ballard(グレン・バラード) and Alanis Morissette(アラニス・モリセット)
01. Front Row / フロント・ロウ
バックで言葉が重なり、不思議なコーラスワークに仕上がっています。
02. BABA / BABA
インドに行った体験から生まれたという曲。
”BABA”というのは特定の人物ではなく、状況を意味しているとのこと。
この曲を通して表現したかったのは、スピリチュアル・コミュニティーについてのフラストレーションで、誰の方がよりスピリチュアルだとか、誰に教えを受けたとか、そういうことに囚われる状況に嫌気が差したことという。
アラニスは「自分の内面から違う所へ出たからと言ってスピリチュアルになれるということではない」と再認識したそう。
※歌詞中の単語→”baba”も”guru”もヒンドゥー教の導師の事だが、前者はことに霊的指導者の称号として使われる。kaliはヒンドゥー教のシバ神のお妃。
03. Thank U / Thank U
1stシングル。
困難な儒教においてこそ自分を理解できるようになったということを語っている歌。
「自分がハッピーになる為に、まず混乱や悲しみというダークな感情を歌ってそこから逃避しようとする気持ちになる代わりに、辛かろうが、楽であろうが、どういう状況でもそれは自分を見つめる機会だと思っている。私は自分がそう考えられるレベルに到達できたことを無償の喜びだと感じているわ。辛いことから逃げるのではなくなった自分に対してね」とアラニス。
MVでは街中、スーパー、地下鉄など公共の場所で全裸姿のアラニスが歌う衝撃的(?)なもの。胸元はアラニスの長~い髪でうまく隠されています。(^^;)
04. Are You Still Mad / アー・ユー・スティル・マッド
チェロの音色も印象的な1曲。
”Are you still mad~”と連呼される歌詞も注目。
05. Sympathetic Character / シンパセティック・キャラクター
こちらは”I afraid of ~” ”You were my ~”というフレーズが繰り返される1曲。
06. That I Would Be Good / ザット・アイ・ウッド・ビー・グッド
5thシングル。
こちらは”That I would be ~”というフレーズが繰り返されている。
フルートを吹いているのはアラニスで、前回のハーモニカ同様、その場のノリで初挑戦したそう。
youtu.be
07. The Couch / ザ・コーチ
主語”I”が示す人物がころころと変わる複雑な構成で歌詞が書かれている。
実話をアラニスと彼女の父親との会話を通して展開している曲だが、アラニスが1人二役で父親の代わりに語っている部分があるのでわかりにくい。
国内盤の対訳では、その辺りの構成を汲んで解りやすく丁寧に和訳されています)
アラニスの父親が幼少時代に抱えていたトラウマを彼女が対処するに当たって、父親に「今から過去の傷を掘り返しても決して遅くないし、良い夢を見ることはできるわ」と語っているもの。
「父の事を責めているのではなく、過去の問題を対処せずに私を育ててくれたことも許して、父をサポートすると言っているの」とアラニス。
08. Can't Not / キャント・ノット
”Because I can't not~”或いは”Because we can't not~”というフレーズが繰り返される1曲。
アラニスは、よく「何故こういうことをしているの?」「何故それほど直接的に素直になれるの?」と聞かれるそう。
そして彼女はいつも「それ以外のやり方を知らないから」と答えるという。
嘘をつくのは嫌で、そういう質問に対する返答として”I can't not being honest(正直にならずにはいられない)”という言葉が浮かび、この曲が生まれたそう。
09. UR / UR
ハーモニカの音色が前アルバム『Jagged Little Pill』を彷彿とさせる1曲。
リズムもアラニスの歌声も心地良い雰囲気。
10. I Was Hoping / アイ・ワズ・ホーピング
”The Couch”同様、歌詞の構成が複雑で、サビ以外のAメロ等は、アラニスが友達と楽屋で話したことが歌われていて、サビの部分はその頃に彼女がデートしていた恋人に向けての気持ちが歌われている。
ミステリアスなメロディラインも興味深い1曲。
11. One / ワン
自虐的な内容の歌詞。
これまでとは一風変わったタッチの楽曲。
12. Would Not Come / ウッド・ノット・カム
冒頭の笑い声が印象的なオリエンタル&インダストリアルなサウンドとヒップホップ的なリズムが印象的な1曲。
「it」が指しているのは、自分がどういう人間かということを知る「無上の喜び」のこと。
アラニスは「自分自身を知る為に自分の外面を見ていたけれど、もはやその必要なないのよ」と歌いたかったそう。
13. Unsent / アンセント
3rdシングル。
アラニスがある人に手紙を書きたいと思ったことから始まり書かれた曲とのこと。
これまで話せなかった想いを伝えたいと、最終的に曲として完成させている。
最初のヴァージョンでは、男性の名前が実名で歌われていたそうですが、最終的に名前変更され、男性のプライバシーは尊重された形となりました(^^;)
因みにこの歌詞に出てくる(変更後の)男性の名前は、Matthew(マシュー)、Jonathan(ジョナサン)、Terrance(テレンス)、Marcus(マーカス)、Lou(ルー)の4名に宛てた内容。前述の通り、実名ではなくなっているので、仮名ですが。。。
実名、ちょっと気になる…(^^;)
14. So Pure /ソー・ピュア
4thシングル。
今アルバム中で最もキャッチーなポップ・チューン。
アルバムタイトルである『Supposed Former Infatuation Junkie』はこの曲の歌詞から取られている。
「以前私は”若すぎる・未熟・感情的”などと言われてきたけれど、心で感じていたことを全て頭で考えて、心で感じるだけに留めておかなかったわ。私は”自分の言葉に心酔することに病みつき”だという事実を軽く見ていて、そういう自分を笑っているのよ」とアラニス。
ここでの”Junkie(ジャンキー)”とは”~に病みつき(中毒)になって”という意味。
アラニス曰く「ピュアと言うのは、ありのままのその人であり、またそのことを弁解しないということよ」
15. Joining You / ジョイニング・ユー
2ndシングル。
アラニスの友人に向けて書かれた曲。
スタンダードでオーソドックスなロック・ナンバー。
力強くメロディアスな1曲で、個人的にお気に入り曲(^^♪
16. Heart Of The House / ハート・オブ・ザ・ハウス
アラニスが母親に向けて書いたという1曲。
「私は自分の持つ女性らしさや、母を含む周りの女性らしいエネルギーを否定してきたけれど、肉体・精神・情操共に均等の取れた総合した人格になってから、私はヒューマニストになり、より男性的にも、女性的にもなれたわ。今までの自分を振り返ってみると、女らしさの要素を随分と拒否してきたけれど、それまで私が否定してきたことに母親も含まれていたのよ。この曲では、母の女性の部分を尊重しているわ」とアラニス。
アコースティック主体の落ち着いたスロー・ナンバー。
17. Your Congratulations / ユア・コングラチュレイションズ
ラスト・トラック。
シンプルなアレンジで、アラニスのヴォーカルが引き立っているエモーショナルなスロー・ナンバー。
ラストの余韻を味わうのにぴったりのフィナーレ(#^^#)
18. Uninvited (DEMO) / アンインバイテッド(デモ・ヴァージョン)
ボーナス・トラック
ニコラス・ケイジ&メグ・ライアン主演の映画『シティ・オブ・エンジェル』の主題歌のデモ・ヴァージョン。
本作『Supposed Former Infatuation Junkie』に向けて、アラニスは
「怒りや攻撃と、忍耐のバランスの中間距離が見つけられれば、自分が感じている事を語らずにどんな感情でも満足させることができ、混乱も招かずに気持ちを伝えることが出来る。なぜなら、多くの人たちは言葉で何かを伝えようとしたら、自分の感じる怒りや情熱を否定しなければならないと思っているから。同じように、自分たちがそういうものを感じたら、落ち着いて話をすることが出来ないと思うから、両極端のバランスを見つけるといいということなの」
17曲+ボーナストラック1曲の全18曲入りで収録時間70分越えの大作。
アラニスの言葉通り、攻撃性と忍耐の中間の絶妙なバランスの感情を音楽で表現した興味深いアルバム…。
当時聴いていた私は、長時間なので途中少し疲れてしまいましたが…(^^;)
改めて1曲1曲を噛みしめて聴くと、また当時と違った印象で新鮮でもありました。
「Thank U」や「So Pure」など、アラニスを代表する名曲揃いです。
因みに「Thank U」は、昨日の記事で、ノルウェーのシンガーソングライター、AUROR(オーロラ)のカヴァー・ヴァージョンをご紹介したばかりです。↓↓↓
アラニスのアルバムと併せて是非チェックしてみて下さい(*^^*)